キヤノン株式レポート ミラーレスとメディカルの動向,株主優待,配当金利回りは?
今回はカメラ、プリンターをはじめとする精密機器を取り扱うキヤノン(7751)の企業研究、業界研究です。
ワードプレスブログに移転しました。
昨今、キヤノンが得意としてきたカメラ市場はスマホの普及とカメラの高解像度化により急速に縮小してきています。10年ほど前には私もよくコンパクトデジカメをもって旅行に出かけたりしましたが、今ではスマホのカメラで十分きれいな写真を撮ることができてしまいます。しかし、縮小するカメラ市場でもプロ向けのニーズは安定しており、一眼レフカメラなどではキヤノンは引き続き高いシェアを握っています。
東芝メディカルの買収などで他領域への進出に力を入れているキヤノンですが、安定した財務基盤を元に次のビジネスを見つけられるかが課題と言えそうです。
キヤノン株式レポート ミラーレスとメディカルの動向,株主優待,配当金利回りは?
キヤノンの株価と株式買付情報
株価 | 3,215.0 | 円 |
単元株数 | 100 | 株 |
最低買付価格 | 321,500 | 円 |
一株当たり配当(年) | 160 | 円/年間 |
配当利回り | 5.0% | - |
(2019年6月23日調べ)
配当金の権利落ち日は、期末配当が12月末日、中間配当が6月末日となっています。キヤノンは株主還元を強化しており、配当利回りが5.0%非常に高水準となっています。
一株当たり配当金の推移
14年12月期 | 15年12月期 | 16年12月期 | 17年12月期 | 18年12月期 | |
中間配当 | 65.00 | 75.00 | 75.00 | 75.00 | 80.00 |
期末配当 | 85.00 | 75.00 | 75.00 | 85.00 | 80.00 |
合計 | 150.00 | 150.00 | 150.00 | 160.00 | 160.00 |
<配当金の権利落ち日>
中間配当 ・・・ 12月末日
期末配当 ・・・ 6月末日
キヤノンは株主還元に積極的な企業で財務基盤も安定しているため、その配当利回りは5.0%非常に高水準となっています。
株主優待
現在、株主優待の情報はありません。
従業員の年収、勤続年数
従業員数 | 25,891 | 人 |
平均年齢 | 43.8 | 歳 |
平均勤続年数 | 19.2 | 年 |
平均年間給与 | 7,787,060 | 円 |
キヤノングループの従業員195,056人のうち、親会社であるキヤノンで勤務する従業員の年収、勤続年収はこのようになっています。メーカーとしては年収水準が高く勤続年数も長いため従業員の労働環境は良好なことが見て取れます。今後、親会社の状況だけでなく、グループ全体の年収や勤続年数も開示されることが望まれます。
格付情報
<長期格付け>
・スタンダード&プアーズ AA-
・ムーディーズ A1
・格付投資情報センター AA+
業績情報
キヤノン | ||
時価総額 | 4,288,050 | 百万円 |
売上高 | 3,951,937 | 百万円 |
営業利益 | 342,952 | 百万円 |
営業利益率 | 8.7% | % |
当期利益 | 252,755 | 百万円 |
利益率 | 6.4% | % |
一株当たり利益 | 234.09 | 百万円 |
PER | 13.73 | 倍 |
自己資本 | 2,827,602 | 百万円 |
一株当たり純資産 | 2,618.76 | 百万円 |
PBR | 0.81 | 倍 |
キヤノン有価証券報告書(2018年12月決算)を元に筆者作成
地域別売上高
年度 | 2018年12月期 | |
日本 | 869,577 | 百万円 |
米州 | 1,076,402 | 百万円 |
欧州 | 1,015,428 | 百万円 |
アジア・オセアニア | 990,530 | 百万円 |
計 | 3,951,937 | 百万円 |
国内比率 | 22.0% | |
海外比率 | 78.0% |
キヤノンは日本に限らず世界中で幅広く製品販売に成功していることがわかります。海外売上比率は、ソニーの約70%、日立の約50%を上回り、約80%と高い水準となっています。日本市場は今後縮小していくことが確実ですから、海外市場に強い企業はそれだけチャンスも多いですね。
セグメント情報
グループ会社の状況
<上場子会社(2社)>
・売上高 621,591百万円
・従業員数 17,282人
・キヤノンによる持株比率 58.39%
・事業内容 キヤノン製品ならびに関連ソリューションの国内マーケティング
(業績等の情報は2018年12月期決算による)
キヤノン電子(株)
・売上高 90,767百万円
・従業員数 5,773人
・キヤノンによる持株比率 55.1%
・事業内容 精密機械器具、電子・電気機械器具等の開発・生産・販売
(業績等の情報は2018年12月期決算による)
業界での立ち位置
①ソニー(日本)
②キヤノン(日本)
事業の強みと経営上の課題
・スマホの普及によるカメラ市場の縮小
2010年前まで広く流通していたコンパクトデジタルカメラは、iphoneをはじめとする高画質のカメラを搭載したスマートフォンの普及により急速に市場が縮小しました。カメラをはじめとする光学機器で高いシェアを持っているキヤノンにとっては大きな打撃となりました。
・オフィス機器市場の成熟化
カメラ機器と並んでキヤノンの主力商品であるプリンター、複合機等のオフィス機器。これらは新興国を中心に市場の伸びが続いていましたが、今後大きな市場の伸びが期待できない分野です。今後も一定の取り換え需要は続くものと思われますが、企業として成長をするためには新しい分野の開拓が必要になるでしょう。
・東芝メディカルの買収
キヤノンは2016年に不正会計問題を発端とする経営危機に陥っていた東芝からメディカル事業を買収しました。メディカル事業は人命にかかわる危機を取り扱うため、製品の不具合があった場合のリスクが高いという懸念はありますが、軌道に乗れば高い利益率を出せる分野でもあります。キヤノンはもともと生産性の向上による原価率の低減や製品品質の維持向上が得意な企業ですので、東芝メディカルの持っている技術を生かしながら新しい分野を開拓できるかが今後の業績のポイントになりそうです。
経営層の高齢化
創業者一族の一人として長くキヤノンをけん引してきたのが、元経団連会長でもある御手洗 冨士夫氏です。1995年に60歳でキヤノンの社長に就任し、事業の選択と集中やセル生産方式の導入による原価率の低減などに着手し、現在のキヤノンの経営の基礎を作ってきました。
しかし、御手洗氏は1935年生まれの84歳(2019年現在)と高齢なので、次の世代の経営者へのバトンタッチがキヤノンの重要な課題と言えそうです。
<御手洗 冨士夫氏 略歴>
・1935年 大分県生まれ(創業者の一人である御手洗毅の甥)
・1995年 キヤノン社長就任(60歳)
・2006年 キヤノン会長に就任、経団連会長に就任(71歳)
・2012年 キヤノン会長兼社長として社長に復帰(77歳)
・2016年 キヤノン会長に専念(81歳)
また、長くキヤノンの経営トップを務めた御手洗氏の右腕とも言われる代表取締役副社長 CFO田中 稔三氏も1940年生まれの79歳(2019年現在)です。1995年に取締役経理本部長、2008年からは代表取締役副社長と長くキヤノンの経営に携わってきましたが、次の経営における参謀となる人物の登場が期待されます。
沿革、ニュース
・1933 東京六本木で精機工学研究所として創業
・1934 カメラ試作機「KWANON(カンノン)」を制作。これが社名の由来となる。
・1935 CANONを商標登録
・2000 ニューヨーク証券取引所に上場
・2016 東芝メディカルシステムズを6,655億円で買収、連結子会社化