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株式上場のメリットデメリット18個【創業者、経営者、社員】

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本記事では「株式上場のメリットデメリット18個【創業者、経営者、社員】」ということで、株式上場による会社・従業員のメリットデメリットや、上場審査基準について解説します。

 

 

<本記事の内容>

  • 株式上場のメリットデメリット
  • 経営者、創業者から見たメリットデメリット
  • 従業員から見たメリットデメリット
  • 株式上場の審査基準

 

 

企業の商品を買ったりサービスを受けるときは、聞いたこともない会社よりも、上場企業の方がやっぱり安心感がありますよね。また、就職活動や転職活動で働く会社を選ぶときも、よくわからない会社より、信頼感のある上場企業を希望する人が多いではないでしょうか。

 

企業の社会的信用や知名度の向上など、株式上場にはいろいろなメリットがある一方、デメリットもないわけではありませんので、整理して確認してみましょう。

 

株式上場のメリットデメリット18個【創業者、経営者、社員】

株式上場とは?【英語ではIPO(Initial Public Offering)】

株式上場とは、株式会社の株式が証券取引所で自由に売買できるようになることを言います。英語ではIPO(Initial Public Offering)と言います。株式上場している企業のことは上場企業と呼び、これらの言葉をニュース等で耳にすることも多いと思います。

 

株式会社とは、株式を発行することで出資者からお金を集め、その資金を元手に事業を行います。会社に出資をした株主は、保有している株式の割合に応じて会社を所有することになります。100株を発行している会社の株を50株保有しているなら、その会社の50%を所有していることになるのです。

 

株式会社は上場するまでその株式を創業者やその家族など、限られたごく一部の人が所有しているケースが多いですが、株式上場をすることによって、その会社の株主数は爆発的に増えることになります。株式上場はその会社が創業者のもとを離れて、公のものになることを意味します。株式上場をすることにより、会社の信用度や知名度を一気に上げることができることから、株式上場を一つの目標として会社経営をする創業者も多くいます。

 

株式上場のメリット【経営者、創業者、会社側】

会社が株式上場して、その会社の株が証券取引所で自由に売買できるようになると、どのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。まずは株式上のメリットから見ていきましょう。

 

<メリット>

・社会的信用や知名度の向上

・資金調達がしやすくなる

経営管理体制や経営の透明性の強化

・優秀な人材が採用しやすくなる

・社員、従業員のモチベーションが向上する

・株価上昇による創業者利益が得られる

 

メリット①社会的信用や知名度の向上

会社が株式上場するためには、証券取引所が定める厳しい審査基準をクリアしなければいけません。株式上場する前の会社の場合は、その会社がどのような会社で、どのような経営成績を上げているかを知ることは困難ですが、株式上場することでその会社は厳しい審査基準をクリアしたことを証明することができるので、社会的な信用を獲得することができるのです。

 

社会的信用はビジネスをする上でも有利になることが多いものです。例えば、銀行からお金を借りるときに、上場基準をクリアしている会社という事であれば、銀行の借入担当者の信用を得ることができ、円滑な融資につなげることができます。

 

また、ビジネスで新規開拓をするときにも、株式上場は有利に働きます。これから取引しようとする会社が海のものとも山のものとも知れない会社より、上場企業の方が圧倒的に安心感がありますよね。あなたが何か買い物をするときや、サービスを受けるときにも、よくわからない会社より、知名度のある上場企業の方が安心して取引をすることができるのではないでしょうか。

 

メリット②資金調達がしやすくなる

会社は資金がなくては事業を行うことができませんし、資金繰りが悪化すれば倒産してしまうこともあります。会社は株式上場することによって資金調達がしやすくなることも大きなメリットの一つです。

 

まず、株式上場することによって資金調達手段を多様化させることができます。株式上場前の会社であれば、資金調達手段は基本的に銀行借り入れになります。これが株式上場した企業になると、証券取引所を通じて公募増資(株式を発行して投資家に買ってもらい資金を集める)をすることによって資金調達をすることができるようになります。銀行借入は期日が来たら返済しなければいけないのに対し、公募増資で集めた資金は基本的に返済する必要がないというメリットがあります。

 

株式上場した企業は銀行借入での資金調達も有利に進めることが可能です。銀行は融資をするときに信用のない企業であればあるほど貸したお金が返ってこないリスクが高くなるので、お金を貸し渋ったり、高い金利を設定して貸倒リスクに備えます。これが株式上場することによって会社の信用度や知名度が向上すれば、銀行の融資審査が通り易くなったり、借入金利を低く設定してもらうことが可能になります。

 

メリット③経営管理体制や経営の透明性の強化

株式上場を果たすためには企業の経営管理体制や経営の透明性を強化する必要があります。例えば、東証マザーズの場合には株式上場に当たり、以下の審査基準が定められています。

 

東証マザーズ 上場審査の内容>

項目 内容
企業内容、リスク情報等の開示の適切性 企業内容、リスク情報等の開示を適切に行うことができる状況にあること
企業経営の健全性 事業を公正かつ忠実に遂行していること
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性 コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること
事業計画の合理性 相応に合理的な事業計画を策定しており、当該事業計画を遂行するために必要な事業基盤を整備していること又は整備する合理的な見込みのあること
その他公益又は投資者保護の観点から東証が必要と認める事項 -

参考:日本取引所グループ 上場審査基準

 

株式上場をすることによって不特定多数の投資家に会社の株をもってもらうには、正しい社内管理や決算情報の開示ができなければいけません。会社の株式を買ったのに、会社がずさんな社内管理をしていて不祥事を起こしてしまったり、決算情報が間違っていて投資家の投資判断を誤らせるようでは困るわけです。

 

このような上場に必要な管理体制、情報開示体制を強化していくことは、上場審査を通過するという意味だけでなく、今後会社が成長していく上で大きなメリットになります。

 

メリット④優秀な人材が採用しやすくなる

株式上場をすることで、会社の信用力や知名度が向上すると、今までよりも優秀な人材を採用しやすくなります。これは、優秀な人材であればあるほど、より良い条件の企業に入る傾向があるからです。

 

上場している会社が必ずしもいい職場というわけではありませんが、働いている会社がしっかりしている会社かどうか(=上場しているかどうか)は、働く人個人の信用に繋がる面もあるので、優秀な人材の多くが上場企業で働くことを選択します。どんな会社でどんな仕事をしているかは人にとやかく言われることではありませんが、「どこで働いているの?」と聞かれたときに、よくわからない会社を答えなければいけないより、上場企業で働いていると答えられる方がいいという人が多いのではないでしょうか。

 

また、上場企業の方がその会社の知名度や信頼性を使ってビジネスを円滑に進めることができるため、上場企業は利益を上げる力があり、それが従業員にとっての良い待遇(給料や休暇日数など)に繋がることも多いです。

 

メリット⑤社員、従業員のモチベーションが向上する

働く職場として必ずしも上場企業が良くて、非上場企業が悪いというわけではありませんが、上場企業のように社会的信用や知名度のある会社で働く方が、会社への帰属意識や貢献意識が高まりやすく、それが仕事へのモチベーションに繋がります。

 

特に、株式上場前から株式上場を目指して働いてきたメンバーは、株式上場によって会社の力が爆発的に上がる瞬間を目の当たりにしたり、上場の喜びをメンバーで共有することで、団結力が大幅に高まるでしょう。

 

メリット⑥株価上昇による創業者利益が得られる

一般的に株式上場をするとその会社の株価は大きく上昇します。株式上場する前の会社の株式は、創業者やその家族で大部分を保有していることが多いのですが、株式上場して大きく値上がりした株式を売却すれば、創業者は莫大な利益を手にすることができます。しかし、株式を売却することはその会社の所有権を売却することでもあるので、創業者が手塩にかけて育ててきた会社の株式を売却することには心理的な大きなハードルもあります。

 

株式上場のデメリット【経営者、創業者、会社側】

株式上場のデメリット【経営者、創業者、会社側】

社会信用力や知名度の向上など、多くのメリットが得られ、会社経営の目標とされることも多い株式上場ですが、メリットばかりではなくデメリットもあります。株式上場のデメリットは、これまで主に創業者のものであった会社が、株式を不特定多数の投資家にばらまくことで、会社が公のものになることで生じるものです。株式上場のデメリットをあげていくと以下のようなものがあります。

 

<デメリット>

・経営の自由度が下がる、意思決定が遅くなる

・配当による利益還元をしなければいけない

・財務状況など会社の手の内を開示しなければいけない

・事務作業コスト、上場費用の負担増加

・企業買収リスクが高まる

 

デメリット①経営の自由度が下がる、意思決定が遅くなる

株式会社における最高意思決定機関は株主総会とされていて、株式会社の経営に重要な事項は株主総会で株主の賛成を得なければいけません。例えば、以下の事項は株式会社の経営に重要な事項とされ、会社の役員や社員だけでは決定することができず、株主総会で意思決定をする必要があります。

 

株主総会による決定事項>

  • 取締役、監査役の選任
  • 取締役の解任
  • 剰余金の配当
  • 剰余金の額の減少
  • 剰余金についての処分
  • 自己株式取得
  • 資本金額の増加
  • 資本金額の減少(分配可能額より少なくなっている場合)
  • 準備金額の増加、減少
  • 競業・利益相反取引などの承認
  • 譲渡制限株式の買取り
  • 特定株主からの自己株式取得
  • 譲渡制限株式の相続人などへの株式売渡請求
  • 株式の併合
  • 募集株式の募集事項の決定等
  • 監査役及び累積投票で選任された取締役の解任
  • 役員の損害賠償責任の一部免除
  • 資本金の額の減少(減資)
  • 定款の変更
  • 解散
  • 事業譲渡の承認
  • 組織の変更、合併、会社分割の組織再編等

 

株式上場する前の会社であれば、株主数も少ないため株主総会での意思決定も容易ですが、株式公開によって不特定多数の人が株主になると、意思決定の合意は当然難しくなります。物事を決めたり判断するときは一人で決めるのが最も早く、人数が増えるにしたがって決まらなくなったり決定が遅くなるのは当然ですよね。

 

 

また、株式会社は上場することによって取締役の任期が最長10年から最長2年に短縮されます。取締役は会社の経営を行う重要メンバーですが、任期が短くなることで、次回以降も取締役を務めることができるように株主の意向を伺う取締役が増えることになります。結果として、取締役による自由な経営が難しくなり、不特定多数の投資家が満足する大衆的な経営になってしまいがちです。

 

<取締役の任期の違い>

  • 上場会社の取締役の任期2年以内
  • 非上場会社の取締役の任期10年以内

 

会社法332条1項 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。

会社法332条2項 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時まで伸長することを妨げない。

出典:e-gov 会社法

 

また、株式上場にって生まれた不特定多数の株主は、株価が上場すれば利益を得ることができるので、会社に対して短期的な利益が上がる施策を求めがちです。しかし、会社の利益の源泉である研究開発活動などは、将来的には大きな会社の力になる一方で、短期的にはコスト負担になりがちです。このような将来の大きなメリットの獲得に向けた投資が、不特定多数の投資家には理解されず、経営の視点が短期的になり、長期的な会社の発展を阻害されることもあります。

 

デメリット②配当による利益還元をしなければいけない

不特定多数の人が会社の株主になることで、個々の株主は会社に利益の分配(配当)をするように求めてきます。非公開企業の場合は、株主が創業者など限られたごく一部の人しかいないので、利益還元をするもしないもかなり自由に決めることができました。しかし、株式上場により株主になった不特定多数の投資家は、株式を保有することによって利益を得ることを目的にしているので、会社に対して利益の分配を強く求めてきます。

 

また、配当をするにしても、株式上場までであれば配当金の受け手は創業者などの会社関係者になりますが、株式上場をすると幅広い投資家に利益の分配をしなければいけません。そういう意味では会社の資産が、これまで関係がなかった新たな株主に分配しなければいけないというのは株式上場のデメリットの一つです。

 

デメリット③財務状況など会社の手の内を開示しなければいけない

株式上場をすると、自社の株式を購入してくれる投資家が投資判断ができるように決算情報など、様々な情報を開示しなければいけません。会社の事業戦略など手の内を明かしたくない企業にとってはこれもデメリットに繋がります。

 

デメリット④事務作業コスト、上場費用の負担増加

株式上場をすると、上場前に比べて社内監査の手続い費用や、決算開示を行うための作業など、事務作業に係るコストが大幅に増えることになります。上場審査を受けるための費用だけでなく、一度上場した後も継続的に上場維持のための費用が掛かることになります。

 

東証一部に上場する場合の費用>

上場審査料 400万円
新規上場料 1500万円
年間上場料 96万円~456万円

参考:日本取引所グループ 新規上場ガイドブック 2020年調べ

 

デメリット⑤企業買収リスクが高まる

株式上場して、不特定多数の人に株式を売り出すことで企業買収をされて経営を支配されてしまうリスクが高まります。株式上場する前は知名度が低くてあまり知られていない企業も株式上場をすることで、様々な投資家やライバル企業に知られることになります。また、不特定多数の人がその会社の株式を購入することができるため、大量の株式を取得する人が現れて経営を支配されてしまう(企業買収)のリスクが高まることになります。

 

企業買収を防ぐためには、株価を高くして企業買収を仕掛けようとする人が株式を買い集めるのに掛かるコストを増やすほか、株式の一定割合を自己株式として会社で保有してしまうなど、いろいろな対策があります。

 

株式上場のメリットデメリット【社員、従業員側】

勤めている会社が株式上場して上場企業になることは、働いている社員、従業員にも少なからぬ影響を与えることになります。社員や従業員から見た時の株式上場のメリット、デメリットには以下のようなものがあります。

 

◆メリット

  • 社会人としての信用度が上がる【クレジットカード、住宅ローンも有利】
  • 会社がつぶれにくくなる【職や収入が安定】
  • 仕事の範囲が広がる、経験値が上がる
  • ストックオプション等で株価上昇の利益を得ることができる

 

◆デメリット

  • 入社が難しくなる、社内の競争が厳しくなる
  • 社内規定が厳しくなる
  • 社員として社会的な責任も負うことになる

 

メリット:社会人としての信用度が上がる【クレジットカード、住宅ローンも有利】

社会人にとって、、どこで働いているかはその人個人の信用に繋がります。聞いたこともない零細企業に勤めている人と、トヨタ自動車三菱UFJなどの大手上場企業に勤めている人では、一般的には大手企業で働いている人の方が信用力がありますね。もちろん個々人によって差はありますし、大手企業で働いている人の中におかしい人もいますが、勤務先だけを見たときにはそういう印象を持つ人が多いということです。信用力の観点からは依然として上場企業の従業員は有利です。

 

くだらない話ですが、女性が恋人や婚約者を親に紹介するときに、よくわからない仕事をしている人よりは、上場企業で働いている人を紹介した方が親は安心するケースが多いのではないでしょうか。このように個人の信用、特に初対面など関係性が薄い人に対する信用は、その人の勤務先によって結構左右されるものです。働いている会社が上場していれば、何となく信用できそうな人、という評価になることも多いでしょう。こういった勤務先による個人の信用力は、クレジットカードの審査、住宅ローンの審査、賃貸住宅を借りるときの審査でも有利になります。

 

メリット:会社がつぶれにくくなる【職や収入が安定】

株式上場した会社は、厳しい上場審査を通過しており、経営管理がしっかりしていたり、潤沢な資金をもっていたりするので、そう簡単にはつぶれることはありません。上場企業は不特定多数の人に株を買ってもらうのですから、ちょっとしたことで倒産してしまっては困るからですね。

 

会社が倒産したり、倒産しないまでも会社が従業員のリストラを行ったりすると、働いている社員としては、自身の職が危ぶまれることになります。上場企業で勤務していれば、中小零細企業よりは相対的に倒産リスクが低いので、職や収入の安定につながります。

 

メリット:仕事の範囲が広がる、経験値が上がる

会社が株式上場してそれを維持していくためには、社内の管理体制を整えたり、決算を正確かつ迅速にまとめて、情報開示をすることが必要です。こうした社内管理の優れたノウハウは、上場会社にいないとなかなか学べないものです。また、上場会社は株式市場から資金を調達して大きな資金を動かすことができるので、中小零細企業では経験できない大きな取引を経験することができるでしょう。

 

転職を考える場合には、中小零細企業から上場企業に転職するのは難しいと言われます。これは、上場企業には、上場を維持するための特有の業務がありますが、中小零細企業からの転職者ではキャッチアップに時間が掛かるためです。

 

反対に上場企業から中小零細企業への転職は比較的容易です。これは上場企業のしっかりした仕事の進め方を身に着けた人であれば、中小零細企業の業務に早期に対応できるからです。

 

メリット:ストックオプション等で株価上昇の利益を得ることができる

会社の中には、従業員の会社への帰属意識を高めたり仕事へのモチベーションを高める目的で、ストックオプションなどを通じて株式を付与しているところがあります。上場前に株式を付与されていた場合は、株式上場によって株価が大幅に上がるケースが多く、従業員も会社の上場によって大きな利益を得ることができます。

 

デメリット:入社が難しくなる、社内の競争が厳しくなる

一般的に上場企業は非上場企業よりも、優秀な人材が集まる傾向にあります。優秀な人材が集まるということは、それだけ入社するのも難しくなるということです。

 

株式上場前から働いている人にとっては社内の競争が厳しくなることもあるでしょう。株式上場によって優秀な人材が集まれば、株式上場前から働いていたメンバーは厳しい社内競争にさらされることになります。

 

デメリット:社内規定が厳しくなる

会社が株式上場するには社内の管理体制やコンプライアンスを強化する必要があります。株式上場前であれば、口約束で決まっていたことが正式な書類を用意しないといけなくなったり、経費の使用規則が厳しくなるといったこともあるでしょう。これは会社としては正しい方向に進んでいるわけですが、社員にとっては慣れるまでは不自由に感じることもあるかもしれません。

 

デメリット:社員として社会的な責任も負うことになる

会社は株式上場することによって株主が増え、今までよりも圧倒的多数の利害関係者が生まれることになります。そうすると社員の些細な確認ミスや、気のゆるみからでた失敗などで会社の信用を大きく既存させたり、大々的にニュースで報道されてしまうこともあるのです。

 

例えば、上場企業の従業員が交通事故を起こしたり飲酒運転をしたりすれば、個人名と会社名が必ずと言っていいほど報道されます。上場企業の従業員であるということは、自分の行動によって自分自身だけでなく、勤務している会社や会社の同僚の信用にも響くということを頭に入れておかないといけません。

 

株式上場における市場の種類と条件【厳しい審査基準】

株式上場における市場の種類と条件【厳しい審査基準】

日本国内に証券取引所は4か所(東京、名古屋、札幌、福岡)ありますが、上場企業のうち約9割が上場しているのが東京にある「東京証券取引所」になります。東京証券証券取引所はさらにその中でも「東証第一部」「東証第二部」「東証マザーズ」「ジャスダックJASDAQ)」「TOKYO PRO Market」という5つの市場が存在します。

 

東京証券取引所の市場区分>

市場区分 上場企業数 時価総額 企業の例
東証一部 約2200社 約590兆円 トヨタ自動車ソフトバンクグループ、任天堂
東証二部 約500社 約7兆円 東芝、ヨネックス、日本KFCホールディングス
マザーズ 約300社 約7兆円 メルカリ、ブシロード、Sansan
JASDAQ(ジャスダック) 約700社 約9兆円 日本マクドナルドホールディングスイオン九州、ワークマン
Tokyo Pro Market 約40社 約700億円 新東京グループ、イー・カムトゥルー

※参考:日本取引所グループ:上場会社数、上場株式数

※参考:日本取引所グループ:株式時価総額

 

東証一部

東証一部は、日本を代表する大企業が上場する市場で、株式市場でまずイメージするのは東証一部だと思います。東証一部に上場するためには非常に厳しい審査基準をクリアしなければいけないので、上場した会社にとっては大きなステータスになります。東証一部には、約2200社の会社が上場しており、トヨタ自動車ソフトバンクグループ、任天堂など日本のトップ企業が上場をしています。

 

東証一部の審査基準(一部)>

  • 株主数が2,200人以上
  • 流通株式数が20,000単位以上
  • 流通株式時価総額が10億円以上
  • 流通株式比率が35%以上
  • 株式時価総額が250億円以上
  • 事業継続年数が3年以上
  • 純資産額が10億円以上
  • 経常利益が直近2年間で合計5億円以上、もしくは時価総額500億円以上かつ直前期売上高100億円以上

 

参考:日本取引所グループ 上場審査基準

 

東証二部

東証二部は、東証一部に次ぐ大きさの株式市場で、東証一部上場企業に準ずる大企業や中堅企業が上場する市場です。東証一部ほどではないものの審査基準は厳しく、時価総額20億円以上、株主人数800人以上等の条件があります。上場している会社数は約500社で、東芝、ヨネックス、日本KFCホールディングスなどが東証二部に上場しています。

 

東証二部の審査基準(一部)>

  • 株主数が800人以上
  • 流通株式数が4,000単位以上
  • 流通株式比率が30%以上
  • 株式時価総額が20億円以上

 

東証マザーズ

東証マザーズは、ベンチャー企業などの比較的歴史の浅い新興成長企業向けの市場です。将来的には、東証一部や二部への上場を目指す成長企業が多く上場しています。東証一部や二部に比べて審査基準は低いものの、会社の成長性を上場事務を手掛ける主幹事証券会社に認めてもらう必要があるなど、新興市場独特の審査要件もあります。東証マザーズには約300社が上場しており、代表的な企業にはメルカリ、ブシロード、Sansanなどがあります。

 

東証マザーズの審査基準(一部)>

  • 株主数が200人以上
  • 流通株式数が2,000単位以上
  • 流通株式時価総額が5億円以上
  • 流通株式比率が25%以上
  • 公募が500単位以上
  • 株式時価総額が10億円以上
  • 事業継続年数が1年以上

 

JASDAQジャスダック

ジャスダックは、東京証券取引所が運営する比較的小規模な会社向けの証券市場です。ジャスダックには、一定の事業規模と実績を有する企業を対象とするスタンダード、将来の成長可能性に富んだ企業を対象とするグロースの2つの区分があります。JASDAQには約700社の企業が上場しており、代表的な企業には日本マクドナルドホールディングスイオン九州、ワークマンなどがあります。

 

ジャスダックスタンダードの審査基準(一部)>

  • 株主数が200人以上
  • 流通株式時価総額が5億円以上
  • 1,000単位以上、もしくは上場株数の10%以上の公募・売り出し
  • 純資産額が2億円以上
  • 直前期の利益が1億円以上、もしくは時価総額が50億円以上

 

ジャスダックグロースの審査基準の一部>

  • 株主数が200人以上
  • 流通株式時価総額が5億円以上
  • 1,000単位以上、もしくは上場株数の10%以上の公募・売り出し
  • 純資産額がプラス

 

ジャスダックグロースには、ジャスダックスタンダードと異なり利益に関する要件がなく、純資産額もプラスであれば要件を満たすことができます。その代わりに企業の今後の成長可能性などが審査要件に含まれています。

 

TOKYO PRO Market

TOKYO PRO Marketとは、成長力のある企業と国内外のプロ投資家をつなぎ合わせることを目指した市場ですが、現時点では市場規模も小さく、証券市場としての認知度も低くなっています。上場企業数は約40社で、新東京グループ、イー・カムトゥルーといった企業が上場しています。

 

審査基準を比較【東証一部、二部、マザーズジャスダック

東証一部、二部の上場審査基準(一部)>

項目 東証一部 東証二部
株主数 2,200人以上 800人以上
流通株式数 20,000単位以上 4,000単位以上
流通時価総額 なし 10億円以上
流通株式数比率 上場株券等の35%以上 上場株券等の30%以上
時価総額 250億円以上 20億円以上
事業継続年数 3年 3年
純資産の額 10億円以上 10億円以上
利益の額又は時価総額 最近2年間の利益の額の総額が5億円以上、又は時価総額が500億円以上 最近2年間の利益の額の総額が5億円以上、又は時価総額が500億円以上
企業の継続性及び収益性 継続的に事業を営み、かつ、安定的な収益基盤を有していること 継続的に事業を営み、かつ、安定的な収益基盤を有していること
企業経営の健全性 事業を公正かつ忠実に遂行していること 事業を公正かつ忠実に遂行していること
企業のコーポレート・ガバナンス、内部管理体制の有効性 コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、機能していること
企業内容等の開示の適正性 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること

参考:日本取引所グループ 上場審査基準 2020年調べ

 

東証一部は日本を代表する株式市場だけあって、上場審査基準は最も厳しくなっています。株主数は2200人以上、時価総額250億円以上、純資産の額10億円以上などが必要になります。また、多くの人が株式を売買することになることから、事業の継続性なども要件に含まれています。東証2部は東証1部の要件を一部緩和したような内容になっています。

 

 

東証新興市場の上場審査基準(一部)>

項目 マザーズ JASDAQスタンダード JASDAQグロース
株主数 200人以上 200人以上 200人以上
流通株式数 2,000単位以上 なし なし
流通時価総額 5億円以上 5億円以上 5億円以上
流通株式数比率 上場株券等の25%以上 なし なし
時価総額 10億円以上 なし なし
事業継続年数 1年 なし なし
純資産の額 なし 2億円以上 プラス
利益の額又は時価総額 なし 最近1年間の利益の額が1億円以上であること、又は時価総額が50億円以上 なし
企業の存続性 なし 事業活動の存続に支障を来す状況にないこと  
企業の成長可能性 なし なし 成長可能性を有していること
健全な企業統治、有効な内部管理体制の確立 なし 企業規模に応じた企業統治及び内部管理体制が確立し、有効に機能していること  
成長の段階に応じた健全な企業統治、有効な内部管理体制の確立 なし なし 成長の段階に応じた企業統治及び内部管理体制を確立していること
企業行動の信頼性 なし 市場を混乱させる企業行動を起こす見込みのないこと 市場を混乱させる企業行動を起こす見込みのないこと
企業内容等の開示の適正性 なし 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること 企業内容等の開示を適正に行うことができる状況にあること
企業内容、リスク情報等の開示の適切性 企業内容、リスク情報等の開示を適切に行うことができる状況にあること なし なし
企業経営の健全性 事業を公正かつ忠実に遂行していること なし なし
企業のコーポレート・ガバナンス、内部管理体制の有効性 コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること なし なし
企業内容等の開示の適正性 なし なし なし
事業計画の合理性 相応に合理的な事業計画を策定しており、当該事業計画を遂行するために必要な事業基盤を整備していること又は整備する合理的な見込みのあること なし なし

参考:日本取引所グループ 上場審査基準 2020年調べ

 

新興市場であるマザーズJASDAQは、東証一部二部に比べて要件はかなり緩くなっています。株主数は200人以上、時価総額は5億円以上が目安になります。

 

特徴としてはマザーズへの上場審査基準でコーポレートガバナンスや内部管理体制が重視される一方で、JASDAQスタンダードでは企業の存続性が審査基準に含まれていたり、JASDAQグロースでは企業の成長可能性が審査基準に入るなど、それぞれの市場ごとに特色のある基準になっています。

 

市場の種類と上場費用【東証一部、二部、マザーズジャスダック

各証券取引市場に上場するには、新規上場時に上場審査料と新規上場料が掛かります。一度上場した後も会社の時価総額に応じて年間上場料が発生します。東証一部であれば上場時の費用だけで約2000万円が掛かり、その後も毎年96万円~456万円の年間上場料がかかることになります。これもマザーズJASDAQの場合には、ある程度リーズナブルな価格になります。

 

<市場の種類と上場費用>

  一部 二部 マザーズ JASDAQ
上場審査料 400万円 400万円 200万円 200万円
新規上場料 1500万円 1200万円 100万円 600万円
年間上場料(時価総額ごと)        
 50億円以下 96万円 72万円 48万円 -
 50億円超、250億円以下 168万円 144万円 120万円 -
 250億円超、500億円以下 240万円 216万円 192万円 -
 500億円超、2500億円以下 312万円 288万円 264万円 -
 2500億円超、5000億円以下 384万円 360万円 336万円 -
 5000億円超 456万円 432万円 408万円 -
 1000億円以下 - - - 100万円
 1000億円超 - - - 120万円

参考:日本取引所グループ 新規上場ガイドブック 2020年調べ

 

上場企業一覧【東証一部、二部、マザーズジャスダック

東京証券取引所の各市場ごとの上場企業一覧は、日本証券取引所グループで見ることができます。

 

日本証券取引所グループ 東証上場銘柄一覧>

https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/01.html

 

株式上場後の条件を満たせないと上場廃止

株式上場は、上場審査時に一定の要件を満たせば終わりではなく、株式上場後も継続的に株式上場するにふさわしい会社としての条件を満たし続ける必要があります。企業が倒産寸前の業績不振に落ち至ったり、会社の株式が全く売買されず株式上場している意味が無かったり、適正な決算発表ができない時には上場廃止になってしまいます。上場廃止の要件は、市場の種類ごとに定められており、東証一部二部はやはり厳しい要件になっており、マザーズジャスダックはやや緩やかな要件になっています。

 

東京証券取引所上場廃止基準(一部①)>

  東証一部、二部 マザーズ ジャスダック
株主数 400人未満(猶予期間1年) 400人未満(上場後10年間は150人未満)(猶予期間1年) 150人未満(猶予期間1年)
流通株式数 2,000単位未満(猶予期間1年) 2,000単位未満(上場後10年間は1,000単位未満)未満(猶予期間1年) 500単位未満(猶予期間1年)
流通株式時価総額 5億円未満(猶予期間1年) 5億円未満(上場後10年間は2.5億円未満)(猶予期間1年) 2.5億円未満(猶予期間1年)
流通株式比率 5%未満(所定の書面を提出する場合を除く) 5%未満(所定の書面を提出する場合を除く) なし
業績 なし なし 最近4連結会計年度における営業利益及び営業活動によるキャッシュ・フローの額が負である場合において、1年以内に営業利益又は営業活動によるキャッシュ・フローの額が負でなくならないときなど
時価総額 10億円未満である場合において、9か月以内に10億円以上とならないときなど 10億円未満(上場後10年間は5億円未満)である場合において、9か月以内に10億円以上(上場後10年間は5億円以上)とならないときなど なし
株価 なし 上場後3年を経過するまでに新規上場の際の公募の価格の1割未満となった場合において、9か月以内に当該価格の1割以上に回復しないときなど 株価が10円未満となった場合において、3か月以内に10円以上とならないときなど

 

東証一部では、株主数が400人未満になったり流通株式数が2000単位未満になると上場廃止の恐れがあります。株に人気がない上場企業は株主を増やすために、配当を増やしたり、株主優待を実施するなどして、株主数や流通数の増加に勤めています。

 

 

東京証券取引所上場廃止基準(一部②)>

  東証一部、二部 マザーズ ジャスダック
債務超過 債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったとき 債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったときなど 債務超過の状態となった場合において、1年以内に債務超過の状態でなくならなかったときなど
利益計上 なし なし 上場申請連結会計年度の営業利益の額が負であり、かつ当該上場会社の上場後9連結会計年度の営業利益の額が負である場合において、1年以内に当該上場会社の属する企業集団の営業利益の額が負でなくならないときなど
JASDAQグロースのみ
売買高 最近1年間の月平均売買高が10単位未満、又は3か月間売買不成立 最近1年間に終了する事業年度において売上高が1億円に満たない場合、最近1年間の月平均売買高が10単位未満又は3か月間売買不成立など なし
有価証券報告書等の提出遅延 有価証券報告書又は四半期報告書を法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合など 有価証券報告書又は四半期報告書を法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合など 有価証券報告書又は四半期報告書を法定提出期限の経過後1か月以内に提出しない場合など
虚偽記載又は不適正意見等 有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき 有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき 有価証券報告書等に虚偽記載を行った場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき

 

東証一部二部、新興市場のどちらにおいても債務超過の会社は株式上場にふさわしくないとして上場廃止の要件に該当します。せっかくその会社の株式を買ったのに、すぐに倒産してしまっては困りますからね。

 

そのほか有価証券報告書と言われる決算発表資料に虚偽記載があったり、規定の提出期限を守れなかった場合も上場廃止になる恐れがあります。

 

まとめ:株式上場のメリットデメリット18個【創業者、経営者、社員】

株式上場はそれまで創業者などごく一部の人が所有していた株式会社が公のものになり、多数の株主と事業資金を獲得するという多くのベンチャー企業にとって目標となるイベントです。社会的信用や知名度の向上は株式上場のメリットではありますが、経営の自由度の低下や事務負担の増加などのデメリットもあります。自社が上場すべきかどうか、就職先や転職先を上場企業にすべきかどうかについて、本記事を参考に検討していただければ幸いです。